folkbowl’s blog

秒針と群青と身体

2017-01-01から1年間の記事一覧

ロマンスは棚の上

某日、都内。待ち合わせに向かう。SNSで交流したそのひと。それとなく拝見した雰囲気、紡ぎ出す言葉、伝わる艶めきと少しのあざとさ。私の胸のうちにあるのは、邪な思い。久々の官能を期待し、怠惰をしまい、足を運んだ。居場所と、格好が記載されたメッセー…

ロックンロール

鵬程万里。ついぞ哀しみや切なさも、私と共にはるばる現在までやって来た。愛着の湧かないそれは、古い友人より他ならぬ、恩人とも同胞とも言える。ずっと開く事のなかった雨傘、また名演の影で出番を待ち続けた曲目、或いは弾かれなかった弦のよう。近く在…

ろーどおぶざなんちゃら

随分と錆びた掲載の指輪は、もう何年か前に自分で購入したものである。確か、初めて賞与を貰った時に、浮かれながら勇んで買ったのだった。買った際のこの指輪は6つだった。6連なる指輪で、これだけ有るならばと気後れせずに買った。今にして思えば、男らし…

気儘に、あの雲より猫より

散歩が好きだという人に告ぐ。私の方が好きである。序でに、せめてもの私の礼儀として教えてあげよう。あなたの好きは片想いである。散歩はあなたを其れ程好んでいないと私は断言出来る。何故ならば、私と両思いだからだ。疑うならば、自己紹介かの如く、私…

東京には椅子がない

ふしだらなバーのカウンターに、怪訝な物言いで僕を揶揄する貴女様。不機嫌を決め込んだ下着姿が滑稽で、夜に噛まれた一匹の羊のよう。平然とウイスキーが駆けた喉が、熱くなるのか冷めるのか、僕は気にしてみる。出会いだとか、そんな言葉の似合わない時間…

色のついた瓶で中身まで

喉元まで屁理屈がやって来たけど、どうにか吐かずに飲み込んだ。その数秒間の沈黙で、悟ったようにあの娘は笑って、僕を窘めた。そんなんだから、ダメなのよ雷鳴みたいに記憶を瞬いた。頼りないや、と洗濯機が蠢いた。ガタガタのエンジンで昨日を洗った。そ…

夏蝉

幾つもの星と星とがぶつかって、何年先の未来が水泡に帰すならば、どうしようか。隕石が気前よく落ちてくるかもしれない、異星人が僕ら攫うやもしれない。そんな時が来たら。見よう見まねで私は小刻みに唇を震わしてみた。口笛が吹けないのだ。観衆の中、響…

海鳴りに会いに

「やい、老いぼれ、私に酒を酌んでくれるな、歳が離れてしまえば立場もぐらつくか?このしこたまアルコール原人めが。」僕は余分に酒を注がれるのがめっぽう苦手である。良き塩梅は自身で決めてこそ良いとする。向かいに座るが畜生であれ、聖人君子であれ変…

荒野と曇天

声明文。つらつら歩かず、傘はさす。凛と姿勢をたて、世迷言など言わぬ。煙草も酒も贅沢せず、序でばかりに嗜もう。野良な猫が居たらば、餌をやる。釣った魚は粗末にせぬ。乾燥を忌み嫌い、清潔極まりない部屋にす。好きな「んと」はきちんと!私はかくのご…

あの雲よりも緩やかに

その時の僕は、さながら迷子のように沈黙をどう転がしてみようかと考えていた。ついぞ答えを待たずして、君は布団を纏い明日に出かけるご様子だった。致し方なく、術の無かった僕はビートルズのIn My Lifeを頭に浮かべ、眠りに就こうとした。少し枕を多く使…

例年に比べて暑いの例年がない

君のアパートと僕のアパートは遠くない。京浜東北を跨げば、短編を読みきる間も無く、着いてしまえる。四階建ての老いぼれた一室に通った。だいたい洒落たロックンロールなTシャツで出迎えてくれた。今日は向こうに鯨のような雲が泳いでいた、と告げれば、て…

はじめに

絵画の事。それより大雑把に云えば、芸術の事。あなたはどんな時に涙を流すだろうか、どんな時に全速力で走るだろうか。それら全てを説明もされず、解読もせず、ただひとしきりに知りたいままで終わった人との交流を僕はたまに浮かべる。興味のない人や事柄…